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 大阪道頓堀に大阪のうどんを代表する老舗のうどん屋がある。
 「IMI」と云う。
 近頃、立ち食いやB級グルメに慣れた舌を、一度本物に戻してみようと訪れてみた。
 道頓堀の”かに”や”たこ焼き”などの賑やかな店構えが沢山並んでいる中、この「IMI」は純和風の玄関を構えている。
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 カラフルな道頓堀の通りのほぼ中央付近、南側である。
 周囲の風景と余りにも違いすぎるので、見過ごしてしまいそうではある。
 敷居が高そうな店である。
 恐る恐る玄関の引き戸を開けて、中に入ってみた。
 直ぐに案内のカウンターがあり、そこで人数1人を告げる。
 「暫くお待ちください」の声に安心して、待合椅子に座った。
 先客は大人数の1組、待ち時間を覚悟したのであった。
 見回してみると店は4階まであるとの案内板がある。
 上の方は座敷や宴会場のようである。
 15分程度待ったであろうか?
 エレベーターに案内され、そして2階のテーブル席に相席となった。
 注文は勿論のこと「きつねうどん」、これでないと大阪のうどんとは言えない。
 10分ぐらい待たされたであろうか?
 きつねうどんが出てきた。
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 出汁は少し濁り気味のきつね色である。
 店自慢の七味を振り掛け、さあ頂いてみよう。
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 先ずは出汁である。
 一口味わう。
 やはりこれである。
 マッタリした昆布の効いた味、その裏に魚節の味が漂う。
 京都のちょっと尖った昆布の味とは違う。
 北海道でも南部で採れる天然の真昆布を使用しているのが大阪の味である。
 魚節は、サバ節とウルメ節だそうであるが、主張がないのが嬉しい。
 トッピングは煮られた油揚げ2枚、そして斜め細切りの葱である。
 油揚げを頂いてみる。
 柔らかいのには少なからず驚いた。そして甘さも丁度良い。絶妙の味付けである。
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 そしてうどん麺、腰は感じられない。
 それでいて柔らかいわけでもない。
 小麦の香りがする逸品である。
 出汁、麺、具とも手間がかかっているようである。
 値段と美味さが比例していると思われる。
 あれこれ思いながら、美味しく完食したのであった。
 さてこの「IMI」江戸時代に芝居小屋が集まる道頓堀で芝居茶屋を始めたのが創業である。
 当時は違う屋号であった。
 その後営業品目は変わったようであるが、終戦直後の昭和21年にうどん屋として再創業し、藤山寛美を始め多くの浪花の芸能人に愛されたと云われる。
 その後、テレビの普及もあり演劇、喜劇が下火となり、いよいよ西隣の中座が解体される時、爆発事故で店の建物も火災焼失したが、その場所に新築され、今日に至っている。
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 中座と云えば、江戸時代からの演劇場、当時は道頓堀五座と云われる劇場を中心に、数多くの劇場があった。
 西から浄瑠璃の竹本座改め浪花座、中座、角座、朝日座、弁天座である。
 現在残っているのは、竹本座の石柱、くいだおれ人形を擁した中座のビル、そして建て替えられた角座の小屋である。
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 そして、五座の更に西に大正末期に建築された歌舞伎の松竹座も健在である。
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 しかし大阪の演劇や寄席は縮小された訳ではない。
 道頓堀とその周りには、新浪花五座と云われる劇場がある。
 道頓堀には上記の角座と松竹座、少し外れた東にある浄瑠璃が引き継がれている国立文楽劇場、またその東の上本町に新歌舞伎座、そして南の難波には吉本のなんば花月NGKである。
 そして道頓堀はご承知のように賑やかな食道楽の街へと変貌を遂げている。
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