1
『♪梅田離れて なかつを過ぎりゃ
想い出捨てた 十三(じゅうそう)よ
女一人で 生きて行く
娘(ネエ)ちゃん 娘ちゃん
十三の娘ちゃん 涙をお拭きよ
化粧くずれが 気にかかる
  庄内離れて みくにを過ぎりゃ
ネオンうずまく 十三よ
・・・・・・・
  そのだ離れて かんざき過ぎりゃ
恋の花咲く 十三よ
・・・・・・・       』
 テレビドラマでは必殺仕事人の「中村主水」役、京都殺人案内の「音川音次郎」役として知られる今は亡き藤田まことが作詞作曲歌唱の『十三の夜』である。
この歌は阪急電車の十三へ繋がる駅名を頭にして、十三の夜のお姉さん達を歌ったもので、知る人ぞ知る歌である。
 阪急電車の十三駅には東口と西口がある。
駅は三つも本線が合流して大きいのに、改札口はどちらもコジンマリしている。
東口を出て、駅に繋がるアーケードの商店街を抜け、左(北)に曲がると、そこには神津神社と云う立派な神社がある。
イメージ 1
 天正年間、即ち信長や秀吉が活躍した戦国時代に創建された由緒ある神社である。
神社の境内には十三戎神社もあり、十日戎では賑わうところであろう。
まずこの神社へ行けば、十三の由来が何か分かるのではないか?と思い行って見た。
 境内の掲示物によると、この神社のすぐ南に「十三の渡し」と云うのがあったとの説明がある。
それが十三の地名の由来なんであろうか?
もひとつ分からないので、ご朱印を頂くついでに神職の方に聞いて見た。
「十三の由来って? どこから来てるんですか?」
「諸説ありますね…。淀川に渡しは沢山あったんですが、といってもここの川は中津川という名前だったんだけどね。それはまあいいとして、京都から大坂に向かって十三番目の渡しだから十三と名付けられたという説、十を「つつ」三を「み」と読みますから、川の堤を洒落て十三と云った説、元々ここら辺りは江戸時代の地図にあるように「十祖」と云われていたので、十三を当て嵌めた説、重蔵さんと云う名士が居たので十三を当て嵌めた説、などなど色々とあります」
「聞くところによりますと、阪急の創業者の小林一三(いちぞう)さんが最初、箕面有馬電気鉄道の駅を作る時に、十三を『じゅうそう』と読ませた駅を作ったという説も聞きますけど…」
「それもあるかも知れませんな…」
なんかハッキリしないままになった。
                2
「十三の渡し跡って、何か石碑でもありますか?」
と聞いて見た。
「神社の前を真っ直ぐ行って、淀川に突き当り右手に行って、十三大橋の袂にありますよ」
「早速行って見てみます」
と聞いて、お礼を言って神社を後にした。
イメージ 2
 行って見ると、新しいものであるが、確かに十三の渡し跡の石碑はあった。
そして道の反対側に、旅人の安全を祈願してくれているのであろう、地蔵さんの祠もあった。
説明によると、この渡しは古来から、大阪と中国地方を結ぶ中国街道の渡しであったとのことである。
特に江戸時代には、西国大名たちは参勤交代の時、自藩の大坂屋敷に一旦入るためにこの渡しを使ったとのことであった。
 淀川の向こうに大阪の梅田のビル群を見て、阪急電車の線路の西側の道を通って、駅に戻ることにする。
 この辺りは「新北野」という。
なぜか?
かなり前のこと「北野」という地名は大阪駅のすぐ北にあって、その川向うであるから新北野と云う地名になったらしい。
しかしここには、有名な大阪府立北野高校がある。
以前は北野にあって、この十三に移転したが、そのまま名前を北野高校としている。
何かこれも、ややこしい話である。
 十三駅と北野高校との間、即ち駅の西南側には、飲食店、パーラー、キャバレー、ピンサロ、ラブホなどが密集している地帯がある。
大抵の場合、これが十三のイメージとなっている。
 しかし駅の北側には、武田薬品の大きな事業所もある。
研究所もあって、医薬剤の基地のような感じがする十三でもある。
 十三名物は何か?
江戸時代、渡しが賑わっていたころには、「十三焼餅」というのがあったそうであるが今はもう無い。
奈良の生駒に引っ越したと云われている。
 現在は「酒まんじゅう」や「みたらし団子」であろう。
戦後間もなく創業した「KYS総本舗」というグループの本店が、駅西口の通りに立派ななりで構えている。
店頭では、蒸籠(せいろ)が湯気を巻き上げている。
立ち寄ってみた。
イメージ 3
 実はこのKYSの酒まんじゅう、かつてはミナミの難波高島屋の筋向いの小さな店が立ち並ぶ一角でも売っていた。
元気の良いおじさんが、一人で忙しそうに立ちまわっていたことを思い出す。
難波へ行って前を通った時には必ずと言っていい程、買っていたが、今はその場所は何処かのデパートのビルになっていて、寂しい思いがしていた。温かいのも美味しいが、冷めて冷たくなったものを餅網で焼いて食べると、香ばしい焦げ目が付いて、なお一層美味しくなったものである。

 今もそうであろうか? 早速試してみよう…。