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 大阪の堺市の一部はかつての和泉国、その和泉国の一ノ宮「大鳥神社」がある鳳地区の南側に草部と云うところがある。
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 この草部と云う名前が前から少し気になっていた。
その理由は大したことではない。
「草部うどん」と云う旧民家を改造したような店をあちこちで見かけるからである。
 恐らくはそのうどん店は、草部うどんと云う伝統のうどんがあってそのチェーン展開をしているのであろう。
どのようなものなのか分からないだけに期待を持っていて、いつかは行ってみたいと思っていた。
 たまたま堺市の三国ヶ丘駅の近辺に出かける機会があった。
昼を挟んで用があったので、近場で昼食を探さないといけない。
 少しウロウロした結果、駅からは少し距離があるが、大きな道路沿いに、黒っポイ田舎風建物で猫のイラストがある草部うどんの店「NRや」を見つけた。

早速、入ってみた。
入った所はテーブルがたくさん置かれているのに誰もいない。
ガラ空きなのかと思いきや、階段から店員さんが降りてきて、2階へどうぞ…、と案内された。

 1階は待合室であったのである。
2階が食事処で、テーブル席はほぼ満員、奥の楕円形のカウンターに案内された。
独立した大部屋である。
 昔懐かしい針交換式の犬のマークのラッパ付き蓄音機やレコード盤が飾られている。
その他にも古い電話機やらテレビやも並べられている。
古い田舎の家を演出しているのであろう。
 田舎うどんなのか?
これは期待出来る。
メニューを見たら昆布うどんが美味しそうだったので、それを頼んで暫く待った。
 10分ぐらい待ったであろうか?
出てきた…。
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うどん鉢も猫のデザインである。
早速、頂いてみよう。
 まずは出汁である。
うどんであるから、勿論のこと醤油ベースである。
出汁の旨みは昆布と鰹節の基本パターンのようである。
3者とも抜きん出るものは感じられず、それに加えておぼろ昆布の味がミックスして、大変美味い出汁である。
 次はうどん麺、手打ちである。
表面は艶々の綺麗な麺である。
しかし、コシは全く感じられない。
大阪のうどんであるからコシは要らない。
 しかし最近は手打ち麺と云えばコシのある麺が主流で、それに慣れてしまっているから、何か頼りない感じがする。
しかし、その柔らかな食感は悪くは無くし喉越しも良い。
 総合して大阪のうどんらしいうどんを味わったのであった。
 この「NRや」の主張はこうである。
出汁は、枕崎産の一本釣りの鰹節を主体に、その他3種類の節をブレンドしている。
網で捕った鰹だとストレスが体中に回り、それだけで味が損なわれてしまうというのが理由である。
昆布は利尻産で、水で76時間かけて旨みを抽出している。
その他添加物は一切使ってはいない。
 うどん麺は、厳選した小麦、塩、水で添加物を使わず、基本に忠実に練り込み、ツヤと適度なコシを実現しているとのことである。
 材料を選び、添加物なしで手間暇かけて調理しているのである。
期待通りの味が実現できているように思われる。
 草部うどんと云う伝統のうどんはあるのだろうか?
実は堺の草部と云う地域は、元々朝廷に仕えた日下部氏とその氏神、重要文化財の「日部(くさべ)神社」があり、由緒多き地域であるのでそう考えたのだが、その関わりは見つからない。

この店の創業は17年前、泉州岸和田に古民家風の店舗を手作りし、そこからスタートしたと云うことである。
創業者の池尾氏は調理師学校を卒業し、軽井沢のホテルレストランで働いていた時に一念発起し、故郷へ帰りこの店を開いたのである。
氏の故郷が堺の草部とのことで、その関わりであろう。

 ぬくもりのある田舎、古民家で食べるうどん、ほっとするひと時である。
そのようなコンセプトで「草部うどん」と命名し、進めているのではと思われる。
大阪には街中発のうどんは多々ある。
しかしこれは田舎発のうどんである。
是非とも頑張って欲しいと思い、店を後にしたのであった。