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 思わぬところに思わぬものがあるものである。
先日、大阪府の南部を走る泉北鉄道に乗って和泉中央駅で下車した。
ここからバスへ乗り継ぐのであるが、丁度昼時、昼食をすることにした。
 この電車は阪和高速道路に沿って走っている。
高速道路は今までに何度も利用しているが、電車で来るのは初めてである。
当然のことながらこの駅も初めてなため、先ず探索をすることになる。
 この駅は大阪の大ベッドタウンの中にある駅である。
通例は駅前にショッピングセンターがあり、そこにはレストラン街もある筈である。
駅を出ると正面にそれらしき場所があったので、そこを目指した。
 到着して眺めたが、そんなに多くの食事店があるわけではなかった。
派手な「近江ちゃんぽん」と云う幟が目に付いた。
「なんで、こんなとこに?」
と思ったのであったが、
「しかし、どっかで見たことがあるな?」
記憶を辿ったが、なかなか思い出せない。
やっとのことで思い出した。
以前に京都で、かつての平安京の朱雀大路であった現在の道、千本通りを探歩した時に、JR二条駅の駅舎の1階にあった店と同じである。
食事時ではなかったので、その店に入ることはなかった。
その時は気にはなったが、もう忘れかけていたのであった。
 なぜ大阪に?、それも南部に?
よくはわからないが、
「これも何かの縁かな?」
と、早速その店に入った。
 メニューはちゃんぽんにラーメンそれに餃子、その他中華の一品などが記載されている。
ためらわずに、標準であろう「近江ちゃんぽん」を注文した。
 料理を待つ間に、テーブルの上にあった近江ちゃんぽんの能書きを読んでみた。
 それによると、
近江ちゃんぽんの出汁は、国産昆布と六種類の魚節を使用し、羽釜でじっくり時間をかけて二段仕込みで仕上げられている。
 具は野菜中心で、他のチャンポンのように中華鍋で炒めるのではなく、手鍋で一つ一つ、グツグツ煮込む和の手法で、具の旨みを存分に引き出している。
 さらに麺も、他のチャンポンの様にではなく、鹹水を使用したどちらかと云うと中華麺である。
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 待つこと5~6分、近江ちゃんぽんが出てきた。
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 さて、頂いてみよう。
具の野菜に加えて少しの豚肉が山盛りとなっている。
シャキシャキ感が保たれていて美味い。
麺はあっさりの淡口醤油味の旨み出汁と絡まって、これも素直である。
出汁は和風出汁、スッキリとした味わいである。
 スープの色を別にすると、見かけは野菜たっぷり版の長崎チャンポンなんかと同じ。
しかし中身の味はスッキリで、お腹への抵抗感は少ない。
 テーブルの上にあった能書きの中に「ちゃんぽんの食べ方」の項目があった。
 最初はそのまま、途中で味の変化が欲しくなったら、レンゲに半分ぐらいの量の酢を入れて…、と書かれている。
皿うどんのような食べ方である。
 試してみた。
確かに味は変わる。
しかし、元の味の方が美味いと思ったが、元には戻れない。
不味くなった訳ではないので、念のため…。
そのまま完食したのであった。
 なぜ、近江・滋賀にちゃんぽんが? という疑問が出てくる。
発祥は丁度50年前、東京オリンピックに向けて、東海道新幹線が滋賀の県内を走る少し前のことである。
そのころ創業した彦根市の「麺類をかべ」の店主が旅先で食べた長崎ちゃんぽんに触発され、独自のちゃんぽんを、関西らしい和風に狙いを定めて作り上げたのであった。以来、彦根で営業していたが、20年ほど前からチェーン店展開を開始した。
現在は近隣府県まで拡大出来ていて、縦の線では北は福井市、南はこの和泉市を超えて関西国際空港近くのりんくうタウンまでとなっている。
東西を結ぶ線では、東は静岡の浜松、西は神戸市の西北あたりである。
思いの外、広がっているようである。

 そして近江ちゃんぽんは滋賀のB級グルメNo.1を目指して、頑張っているところであるが、何せ滋賀は近江商人の発祥地、他にも候補がたくさんありなかなか厳しい。
B級グルメバトルも激しさを増しているのではなかろうか?古くは石田三成、井伊家の統治地、今はひこにゃんの地元の近江ちゃんぽん、彦根ちゃんぽんとも云われるようであるが、さてどうなって行くのであろうか?
楽しみではある。