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 大阪にも富山ブラックならぬ「大阪ブラック」というラーメンがある。
以前に情報誌「KANSAI1週間」のラーメン四天王が選ぶラーメングランプリにて、関西No.1の醤油ラーメンのお墨付きをもらったものである。
 今回はこの大阪ブラックを味わって見ようと、「KingEM本店」を訪れてみる途中下車である。
 予め調べて、「KingEM本店」は、大阪港から生駒山まで大阪のど真ん中を東西に貫く中央大通りの深江橋・高井田間にあることは分かっている。
JRおおさか東線の「高井田中央駅」で下車し、大通りを西の深江橋方向に歩く。
 余談であるが、この辺りは古代には大坂湾が入り込んでいたところである。
その後大坂湾は湖沼化して行き、河川の運ぶ土砂で徐々に陸地化して行ったが、大部分は湿地帯であった。
河内と云われる所以である。
 高井田とはその名前の通り湿地帯の高台にあった集落のことである。
中世の高井田は、石清水八幡宮及び西大寺の領地であった。
 深江の名も大坂湾の入江であったことを示すものである。
 大坂の陣では、この辺りを行軍した家康軍も湿地帯故、難儀を極めたところである。
そのためか大坂方は、勝手知ったるこの地に家康軍を誘い込もうとして、木村重成などが活躍した舞台でもある。
 中央大通りの両側は、工場や事務所街であるが、所々に食事処がある。
食事処は大抵は大看板が掲げられているので、そのうちに「KingEM」の店がわかるだろうと歩いた。
 次の店、次の店と云う風に期待を持って探していくが中々見つからない。
見つからないままに深江橋駅まで到達してしまった。
「おかしいなあ…? つぶれたのかな…?」
道が違うのかと思って、一本裏通りへ入って歩き始めた。
そこに概略の案内板があった。
見てみると、やはりその店は表通りにあるようになっている。
左右の建物の名前も書かれている。
しっかりと目を見開き、表通りを戻り始めたのであった。
 やっと見つけた。
分からないはずである。
A3サイズの大きさの看板しか掲げられていない。それも入口の横である。
とりあえず、見つかって良かったとしよう。
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 2人の行列の後に並んで待った。
まずメニューが配布された。
醤油ラーメンの専門店なので、何種類かのラーメンが書かれている。
大阪ブラックもあった。
他のも美味しそうだが、今回は決めていたので迷うことは無い。
早く案内されることを期待して待ちに入った。
 10分ぐらいで店内のカウンターに案内された。
カウンターだけの店である。
「大阪ブラック」と注文した。
「麺はどうしますか? 細麺、太麺とありますけど…」
「細麺で…」
 暫く待った。
割と早くに出てきた。
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 具はチャーシュー、メンマ、葱の3点、表面一杯に広がっている。
スープは透明の上層部と下層黒いスープの2層に分かれている。
麺は非熟成の細いストレート麺、全て期待出来そうである。
 聞いて見ると出汁にはカツオや煮干しなどの魚類は使用していないとのこと。
烏賊のワタや海老でとっているとのことである。
 まず麺、好きな麺なので文句なし。
次はスープ、以前に食べた富山ブラックの胃に染み渡る塩辛いイメージがあったが、そこまでも辛くは無い。
濃さの度合いで云えば徳島ラーメンより少し辛いぐらいか?
難を云えば、魚介の旨みに慣れているためか、旨みに少々の不足感がある。
 具はどうか?
メンマはかなり堅め、チャーシューは一枚だけだが5mm程度の厚さ、驚くほど柔らかくこの美味さは見事である。
何のかんのと云いながら、トータルとしては美味しく完食したのであった。
 ネットで見てみると、ここの御主人は大蔵官僚からの脱サラで10年以上前にラーメン店を始め、研究に研究を重ね現在に至っていると云うことである。
 他の醤油ラーメンも味わって見たかったが、次の機会にしようと店を出て深江橋の駅に向かったのであった。
 最後にもう一つ余談、
深江は「深江菅笠ゆかりの地」である。
大坂からの伊勢本街道の途中にある。
旅人は深江で菅笠を買い求めて、生駒山の峠を越えて伊勢参りへ向かったのである。
 そのような場所に大阪ブラックはあった。