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 「もりそば」繋がりで、今度はもりそばと云ってもラーメンである。
 京都駅は乗換駅として良く利用する。
昼食時で、時間余裕ありの時は、時々駅ビル10階の拉麺小路を覗いたりするのが楽しみである。
 ここには全国の有名店が10店くらい店を並べており、居ながらにご当地ラーメンが楽しめるからである。
ラーメン店も栄枯盛衰があるようである。時々入れ替わっている。
今度はどんな新しい店が来ているか?
それが一番の楽しみであるのかも知れない。
 先日も覗いてみた。
平日の昼間である。
拉麺小路を一周してみた。
 札幌SMR、徳島TDと云うのは前からあった…。
大阪XX、知らないな…。
富山ブラック、これは富山で食べた。辛かったね…。
なんて思いながら、巡って見たのであった。
 「TS軒」という東京の店を発見した。
超有名店である。
もりそば(つけ麺)を開発した店と云われている。
 東京池袋の本店には、あちらにいるときに何度か出かけたことがあった。
池袋のサンシャインビルの横か裏あたりの広い路地にあったのを覚えている。
 当時はラーメン店の行列がまだそんなになかった時代であった。
それなのに、30分程度はいつも並んだ記憶がある。
行列の元祖か…?
待てば待つほど、美味しさが加わって来るような気がしてきたものであった。
 TS軒の店内はそう広くはなかった。
テーブル・カウンターも狭いものであった。
特に冬場ともなれば、かさばるコートをどうするか、置く場所にも苦労したのを覚えている。
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 メニューは、もりそばの熱盛りと冷たい盛り、それに普通のラーメンであった。
どちらも食べたが、とにかく量は多いのが一つの特徴である。
そしてその味は何とも言えないが、イリコがプ~ンと匂うまろやかな醤油味で、美味しいからこそ量が多くても、完食できてしまうのであった。
 さて、京都駅10階の拉麺小路、TS軒に決めて食券を買って並んだ。
行列で待つこと10分程度…。
案内されて、やっとカウンターに座ることができた。
 行列の時、先に食券を渡していたので、直ぐ出てくると思いきや、一向に出てこない。
10分も待ったろうか…?
 ちょっと小さめのラーメン鉢に具だくさんのラーメンスープと、うどん鉢状の器に、盛り切りのちょっと太めの麺が…。
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 量は多そうである。世間で云う大盛りぐらいか…?
 麺をスープに浸けながら味わい始めた。
味は東京で食べたのと変わらないように思うが、もう遥か昔のこと、忘れている。
 麺の温かさは常温なので、熱いスープに漬けて食べていくと、熱々のスープの温度が下がって来る。
季節的にはちょうどいいのだが、熱くてもいいから「あつもり」したら良かったかな?と思った次第である。
 それでも久しぶりに、美味しく食べられたことは間違いがなかった。
 さてTS軒、頭にタオルを巻いた会長のYさんは有名人である。
テレビのラーメン番組で、よく見かけた。
 実はこのもりそば、このYさんが開発したそうである。
Yさんは、上京して部品工場で働いていたそうだが、兄貴と慕う従兄弟に誘われて、一緒のラーメン店で修行を始めたそうである。
 兄貴が独立するということで、Yさんも付いて行き、一緒に「TS軒」を立ち上げたそうである。
 その後、店も2軒になり、一方の店を任されたYさん、修行していた時代から、まかない料理であった残り物の麺とスープを食べていたところを客に見つけられたのであった。
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 それは湯呑み茶碗にスープと醤油を入れたものに、残った麺を浸したものである。
それを見て、客は是非に食べてみたいと、リクエストしたと云う。
リクエストに応じて客に出してみると、これが極めて好評であった。
それが転機となった。
 その後、研究熱心なYさんは、あれこれ試行錯誤しながら試してみたそうである。そして新メニューとして、つけ麺を完成させたという。
メニューに載せる一品は「特製もりそば」と名付けられた。
 世の中で初めてのつけ麺を開発した。
元祖と呼ばれるようになった。
そのつけ麺、好評につき多くの店で出されるようになって来たのであった。
 つけ麺のいいところは、客は自分で味付けできるということかと思われる。
麺を半分くらいスープに浸けて、麺そのものの味を楽しむ。
どっぷりとつけて、スープの味を楽しむ。
一杯のラーメンで、最初から最後まで、色んな楽しみ方ができる。
 ちなみに、もりそばの麺を熱くして出す「あつもり」は京都の客が池袋の店でリクエストして、今は定番になっているそうである。
しかし、表には見えない隠しメニューとなっているのである。
 最初、東京東池袋の店へ行ったとき、「あつもり」「あつもり」の声が聞こえていたが、何だろう?と思っていた。
 信長が好んだ謡曲「敦盛」をもじった何かの符牒か?と思っていた。
良く考えてみると、盛りの麺を熱くする事であるとわかったのは、数回通った後であった。
 ラーメンは「たかがラーメン、されどラーメン」である。
 美味しいラーメンを作る料理人の方々の情熱に、頭が下がる思いである。