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大阪地下鉄路線に南北を結ぶ堺筋線がある。
この堺筋線の南方面の駅である恵美須町で下車し、大阪の日本橋電器街にて所用を済ませた。

 日本橋の電気街といえば、若いころにはよく来たものである。
オーディオのKG無線、ハムのNN無線、中古やジャンクの五階百貨店やMS電機などなど…、今でも健在であろうか?
ウロついたその頃が懐かしく思える。
 この日本橋に来て、昼になった時には、一本裏の通りに美味しいカツ丼屋があって、たまには行ったものである。
もう何十年も前のことであるので、その店は健在であろうか?
久しぶりに行って見ることにした。
その店の名は「KKS」という。
赤い暖簾が掛かっていたように思うが、とりあえず朧げな記憶を頼りにそのあたりに行ってみた。
 それらしき辺りを暫くウロウロした。
赤い店構えが見つかった。
近づいてみるとしっかりした店構えになっている。
「とんかつ丼 XX円」の立て看板と屋号。
これに間違いなし、と暖簾をくぐった。
「いらっしゃい」
の声に導かれるて、カウンターに座った。
店の中は以前に比べて数段、綺麗である。
カウンター内の調理場も目隠しされていて、以前の雑多な雰囲気は見られない。
注文は勿論普通の「とんかつ丼」、暫くカウンター内の調理人さん達の動きを眺めていた。
 話しかけてみた。
「この店はどれくらい前からやってんの?」
「48年前からですよ…。親父の代からですけど…」
すぐに返事があった。
話慣れた店長のようである。
「何十年か前にここに良く来てたんだけど…。あのころは日本橋もにぎやかだったね…。KG無線とかNN無線、五階百貨店とか…。昼になったらここにきてたんだけど…。店も綺麗にしたね」
「それはそれは、昔に来てくれてたんですか。おおきにありがとうさん。親父のころですね。そのころはまだ子供だったんですよ。家は五階百貨店の近所でしたけど…。テレビゲームができた頃で、良くしに行ってましたね」
「インベーダーとかね…」
「そうそう、それです」
「世の中まだ量販店は無かったから、日本橋に来たら電気製品が安く買えるってね…。電車の中で大きな箱を抱えてる人が多かったね」
「それから暫くして日本橋も変わったね。マニアだけの商店街になってしまった」
「そうですね。時代の流れなんでしょうね」
とんかつ丼も出てきて、とりとめのない話はまだまだ続くが、ここらでカット。
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 最後にこの主人の年を聞いたら、48歳ということだった。
年は少し離れているが、時代背景の想定が良く合った。
なるほどと頷ずき合いの時間帯であった。
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 懐かしの「かつどん」を昔話と共に美味しく頂いて、満足して店を出た。
 店を出た通りから南方向に通天閣が見える。
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 昔はこの風景、何とも思わなかったが、たまにしか来ないので、この景色も何だか懐かしい。
恵美須町界隈は今宮戎の最寄りだけではなく、通天閣にも近いところでもある。
駅の出口から通天閣本通という商店街を暫く歩いて行けば、通天閣の真下に行くことができる。
 通天閣は先ごろ100周年を迎えた。
現在の通天閣は2代目であるが、初代は明治45年に造られた。
新世界の「ルナパーク」という遊園地の中に建てられたものである。
初代の通天閣は、パリのエッフェル塔と台座に凱旋門を模した形であった。
高さは75m、当時は東洋一の高さであった。
 しかしこの初代、昭和18年には空襲の標的にされると云うことと、武器製造のための鉄材の供出と云うことで解体が開始されると云う憂き目にあった。
しかし、取り壊し途中で終戦を迎え、解体途中の無残な姿を長く晒け出していた。
おまけに鉄材も殆ど使われないままだったと云われる。
 2代目が建設されたのは終戦後10年以上も経った昭和31年のことである。
避雷針を含め103mの高さで、2年後に出来た東京タワーの兄貴分であり、設計者も同じである。
名古屋テレビ塔も手掛けた内藤多仲という建築家である。
また「通天閣」の名は「天に通じる高い建物」ということで名付けられたと云われている。
 現在では、大阪にも100mを超えるビルは沢山出来ている。
今度完成したあべのハルカスは300mもあると云う。
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 そういう意味では、大阪の景色を見渡すタワー、通天閣の役割は終わっている。
後は大阪名物、新世界名物としての通天閣であろう。
ビリケンさんと共に、娯楽施設として長く親しまれて欲しいと思う。
 通天閣は夜になると、広告のネオンと共に、翌日の天気予報を4つの色の組み合わせで表す灯りが塔頂上に点灯する仕掛けになっている。このネオンサインは大阪管区気象台と専用回線で結ばれている本物である。
大阪らしい市民サービスであろうかと思われる。
 この後は「通天閣に向かって行って見よう」と云うことになるのだが、それはまた次の機会に…。
次の機会に「ソース二度浸け禁止」の串カツを味わって見よう。