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 岡山の名物と云えば、桃にきびだんご、マスカット、ままかりに祭り寿司、かきオコにホルモンうどん、おまけに蒜山やきそば、ドミカツ丼など沢山あるが、「えびめし」と云う言葉も聞こえる。
えびめしはB級グルメとして、根強い人気のあるものである。
 所用があって岡山で乗り換えした。
何か変わったものをと思って、途中下車し、駅舎の中を歩いていると、弁当売店の一つに「えびめし」の表示を見つけた。
パックに包まれ、積み上げられている。
「当店No.1」との表示もされている。
調理した店の名は「IDR」とも書かれている。
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 よく見てみると、黒に近いこげ茶色のご飯に、赤い小エビが数匹、それに錦糸玉子が乗せられている。
「これが、えびめしか…」
いまだ味わったことが無かったので、さっそく買い求めた。
そして乗り継いだ電車の中で頂くことにしたのであった。
 食べてみると、ドライカレーにソースを混ぜたような濃い味、そして少しの甘さもあった。
ソースはデミグラスソースであろうか?
また、ご飯も少々堅めで、べたつかず、美味しく食べられたのであった。
丁度、神戸のそばめしにも似ているような味であった。
 しかし聞くところによると、えびめしは、元々は岡山ではなく、東京渋谷の同じ名前の店「IDR」の発祥で、昭和30年ごろのことだそうである。
 この渋谷のIDRと云うカレーを主とする店は、店主やシェフは新しい料理を開発する意欲が旺盛であった。
新たにカレーライスコロッケを開発したりしていた。
そんな中で海老の入りのソース焼きめしみたいなものが試作された。見た目はまっ黒な焼きめしであるが、試食してみると見た目とは違い、ほろ甘く香ばしさがいっぱいで、今までに見たことも食べたこともない不思議な食べ物だったそうである。
昔懐かしいような味もしたとのことであった。

「元祖えびめし」と名付けられた。
以来、このえびめしはその不思議な味の魅力で、このIDRの看板商品になったと云われている。
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 このえびめしが岡山に伝わったのは、それから10年後くらいのことである。
IDRの店員の一人が、岡山で暖簾分けの店を開業した時からである。
 持ち帰ったえびめしに改良を加え、自分の店でメニューに載せたのであるが、これが岡山の市街地を中心に人気となって、喫茶店などでも出す店が現れて来たと云われる。
 その後このIDR、岡山県内でチェーン店を出店し岡山一円でヒットすることになった。
そして多くの岡山の人達が知る料理となったのである。
 また、スーパーなどでも惣菜コーナーの定番となったり、冷食大手MN社から冷凍食品も販売されていたり、えびめしの素が売られていたりするが、県外までは広がっていないようである。
 なぜ岡山でえびめしが流行るのかという疑問が生じる。
一説によれば、岡山は大阪、広島というお好み焼きの名物地に挟まれているので、ソース味を受け入れやすい下地があったと云われている。
それもそうと思うが、やはりIDR店のひとかたならぬ努力があったのであろう。
 そう云えば岡山に以前途中下車したことがある。
岡山には、後楽園、岡山城、近くの倉敷など、見学するところが沢山あるが、近場でと云うことで、岡山城を見学した。
宇喜多、小早川、池田氏の城で歴史もある。
重文の月見櫓など当時の建築物は残っているが、天守は空襲で破壊されたため、戦後の建築である。
そして更に近年、改修か行われたものである。
天守は威風堂々としたもので、立派で美しい。
烏城と云われる。
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 天守に近づいて瓦を眺めてみた。
上から3層下までの屋根には、鯱瓦や鬼瓦、軒瓦に金箔が施されている。
4層目から下の軒瓦には金箔が無いので、奇異な感じがした。
近くに居たガイドさんに聞いて見た。
「改修の予算がそこで尽きたのです」
と、冗談とも本気ともつかない答えが返ってきた。
より印象を深くした岡山であった。