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 たまに仕事の関係で時折、東京の大学を訪問する機会がある。
大学を訪問した時には、昼食は大抵の場合、その大学の学食のお世話になっている。
これも楽しみの一つにしている。
 ウン10年前の小生が学生の頃は、学食は安いが不味いと思っていて、敬遠して学外の食堂へ行ったものであるが、最近の学食はメニューも豊富で、料理も美味しいくなっている。
そもそも学食はセルフであるので、まさに「速い」「安い」「美味い」の三拍子が揃っているのである。
東京での昼食は大かたの場合は麺、麺は蕎麦と決めているので、学食でも「○○蕎麦」を注文する。
ある大学の学食でのこと…。
食券をカウンターで差し出すと、
「関東ダシ? 関西ダシ?」
 と聞かれた。
また次の大学でも、同じことを聞かれた。
 そんな時は、
「関東でお願いします」
と応じることにしている。
東京に来ているのだから、当然のことながら、現地の濃い関東ダシの濃い蕎麦を食べたいのである。
 ただ、東京の学生さん達は、何時も濃いダシでは飽きるので、たまには関西風淡口(うすくち:薄口)ダシが食べたくなる人もいるのであろう…。
そんなことから、ダシは2本立てになっているのかも知れない。
 ちなみに、うどんにも同じように濃口、淡口の選択がある。
濃口のうどんって食べたことはないが、どうなんだろう?
うどんは淡口、蕎麦は濃口が良く合って美味いと思っているのは、小生だけであろうか?
 ところで関東の濃口ダシ、関西の淡口ダシはどうしてそうなったのであろうか?
一説には、関東は蕎麦文化、蕎麦は「もりそば」が主流であって、蕎麦を濃いダシ汁につけて食べる。
それが「かけそば」にも適用されたのだと言われている。
 関西はうどん文化、かけうどんが主流であるので、薄口の旨味のあるダシで麺そのものを楽しむようになったと云われている。
 それぞれの地域の嗜好もあると思うが、それ以上に手に入る食材の違いが大きく関係してと云われる。
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 一つは昆布。
北海道産の昆布は、かつては日本海航路で主に関西に運ばれた。
太平洋回りの航路は危険であって、難しかったようである。
 そして水質も違った。関東は硬水傾向、関西は軟水傾向である。
ミネラル分の多い硬水では昆布のうまみが出なかったことから、関東は鰹節主体のダシになったそうである。
すると、どうしても魚の臭みが残るので、醤油でそれを消したことから、大量の濃口醤油が使われたと云われている。
 一方、軟水の関西では昆布の旨味が引き出せるので、昆布と魚のダシに醤油少々となったのである。
 実際の塩分濃度を比べて見ると、関東は6.7%であるのに対し、関西では2.5%というデータがある。
なんと関東が2倍以上であると云うことである。
 このように、関東は濃口ダシ、関西は淡口ダシとなっているのは、それなりの理由・経緯があったのである。
 では、その濃口・淡口の境界線はどこだろうか?
 20年ほど前は、中央構造線(糸魚川・大井川地溝帯)と云われていた。
電気の周波数50Hz、60Hzの境界線である。
実際にそれを調べたテレビ番組もあり、そう言われていた。
 現在もそのままなのかどうなのか?
 駅のホームの「駅そば」を順番に食べて行って、調べた人がいる。
また沿線の蕎麦屋さんを順番に食べ歩いて調べた人もいる。
 どちらの結論も、あの天下分け目の関ヶ原が境目であるということであった。
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すなわち岐阜県は濃口、滋賀県は淡口となっている。
 それなら、関ヶ原の南北はどうなっているのか?
 北部は石川県が濃口、福井県が淡口であった。
南は、伊賀上野、新宮あたりが境目であるということであった。
 お湯を掛けて作るカップ麺の蕎麦に、関東風、関西風と云う味付けが表示されているものもある。
この販売の境目をコンビニの商品棚を見て調べた人がいる。
それによると、やはり関ヶ原が濃口・淡口の境目であるということであった。関東・関西、その味の境目は箱根ではなく、関ヶ原が現在の境目である。
「関」は箱根の関から関ヶ原の「関」へと変化した。
食文化も時代とともに変遷するものなのであろう…。