9月末の上期の締めも何とか見られる数字で終わって、今日から10月、下期が始まった。
今年はなかなか盛り上がりに欠ける。
やはり、消費税アップと急激な円安のためか…?

季節は10月になって衣替えの季節である。
朝晩は涼しくてオーケーであるが、日中は上着を抱えての外出となる。
夏の延長よろしくノーネクタイで甘えているが、何だか締まらない。
しかしまだ世間一般そうなので、かえって気楽に商談ができるのは良いことでもある。

この竹上電機東京支店営業課、週末の飲み会が恒例になってしまったようである。
課長の「よし、行こう!」の声に、いつものメンバーが例の居酒屋「藤屋」に集まったのであった。

「上期は皆の頑張りで何とか恰好はついた。しかし下期は厳しそうだぞ…。最初から心配していても仕様が無いけどね…。まあやれるだけやろうということで、カンパ~ィ」
「かんぱ~ぃ」「カンパ~イ」
早速、始まったのであった。

「最近、つまらないことを、考えるんだがね…」
「なんでしょうか…?」
「JRに色んな路線名が付けられているだろう? わかりにくいのやら、わかりやすいのやら…。何とか付け方を、統一できんもんかね? とにかくわかりにくくてしようがない」
「急にまた、なんですか? さては…、どこかで間違えたとか?」

「いやいや、恥ずかしい話だが…、例の本広製作所の工場へ行くことになってね…。新幹線からJRの在来線に乗るんだが、途中で乗り換えが分からなくなってな…、先方に電話したんだ…。そしたら、方言混じりの早口で、『○○ビ線に乗って、XXビ線に乗って、△△ビ線に乗って、ビ□□駅で待ってます…』と云われてな…。どうも最後のビだけが頭に残っていたので、ビの付く線に乗ったんだ…。どうもそれが間違いだったみたいだ」
「なんですかそれは? ビ、ビの線って?」
「わからんが、立派な迷子になったんだ。 営業がこれではな…、全く面目ない」

「課長、わかりましたよ。それ岡山か広島あたりでしょう? ビ、ビ、って…」
「よく分かったな、図星だ。横田主任は刑事になれそうな感をしてるな」

「備前、備中、備後に吉備、おまけに美作…、ビだらけです。それで鉄道の線区を言うもんだから、わからないですよね。伯備線、芸備線、吉備線、因美線、みんなビの線区です。課長が分からないのも無理はないですよ」

「地元の人は慣れ親しんでいるんだろうけどね。旅行者には全く分からない。失敗したから言うわけではないけどね。わかりやすくして欲しいね」
「まあ、旧国鉄からの100年以上もの伝統ですからね…。変えるとなると莫大な費用もかかるし、このまま行くんでしょうね」
「だろうね…。明治が今に生きてるんだ…」
「線区の名前には、いろんな付け方があるんですね。これも命名法なんて決まりがあるようですけどね」
と、横田主任の講釈が始まったのであった。

「線区の名前ですけどね…。 まず第一は東海道線や山陽線、これは大きな街道に沿った名前ですね。これなら、大部分の国民は理解できますね。
次は出発駅、到着駅のどちらかを名前とする方法ですね。これだと大きな間違いはなくなりますね。 例えば、成田線、横須賀線などですね。
次は途中に経由する駅名を付ける方法ですね。 例えば、奈良の桜井線なんかはそうです。 これは、少し混乱がありますね」

「ほう、色々あるんだな…」
「まだまだありますよ。線区の状態を表す付け方ですね。これが、少し曲者なんですが…。山手線、どうですか? 開業当時はそれでよかったんでしょうが今は何のことかわかりませんね。大阪環状線や中央線は良しとしましょう。今さら、東京環状線なんて変えられないんでしょうしね…。
そして問題のどこからどこまで行くという表現ですね。新しい路線のは、現在の駅名で付けてます。例えば京葉線などは何となくわかります。水郡線や埼京線なんかも、直ぐイメージできますよね。
問題は、旧の国名で付けたものです。 沢山あります。 先ほどの○○ビ線などです。 四国でも、予讃線、土讃線、予土線に現在的な高徳線が混在します。 わかるのは高徳線ぐらいです。 旧国名を知っていないと全く難解です。 変な伝統を守っています」
「地図にも旧国名は書かれていないからね…。今はJRの駅名で旧国名を改めて知ることになる」

「外国から来る観光客にもわかりやすい名前にした方が、もっといいと思うんですけどね…。JRの見解はどうなんでしょうか? 一度聞いてみたいですね」
「意外と旧国名は格好良く、JRの伝統だと思っているんじゃないかな?」

「しかし最近は運転線区に注目して、わかりやすいニックネームを付けていますよね。例えば、琵琶湖線や嵯峨野線などですね。これなんかは評価できますけど…」
「なるほどな…。観光誘致のために親しみやすい名前にしてるんだな。 それに最近は駅に番号をつけたりしてるね。 評価できる部分もありだな。 しかし大元になる線区名だろうね。呼称を統一すればいいのにな…」

「そうですけどね、そこまで気が回ってないのか?必要性を感じないのか?」
「やっぱり、JRはお役所仕事かね? サービスしようという考えはないね。内向きだね…」

「まあまあ、課長、その辺にしておきましょう…。もうちょっといきましょう。ハイボール、お代わ~り!!」

話は一段落、飲み会はまだまだ続きそうであった。