ママ友三人組がいる。
裕子、浩美、理恵の三人、今朝も幼稚園バスにそれぞれの愛児を乗せた後、日課のバス停井戸端会議が始まった。

裕子が切り出す。
「ねえ、ねえ聞いて! この間の幼稚園の父母会なんだけど、皆さん都合が悪くてワタシだけが参加したでしょう…」
「だったわね…。何かためになるお話、あった?」

「議題はね、言われていた通り、一つは、幼稚園の日頃の運営についてのご意見、二つ目は楽しい新提案募集だったわ」
「何か面白いの出た?」
「運営についてのご意見は何人かの人が先生方への感謝とか、良くしてくれてますとか、当たり障りなく話は終わってしまったんだけどね。2つ目の新提案、この間ここで相談したあれを言って見たんだけど…」

「あれね。クラブ活動のことでしょう?」
「そう。いつも同じクラスでしか顔を合わさないから、クラスや歳を越えてクラブをしてみたら楽しくなるんじゃない?、と付け加えてね。そしたら早速質問が出たのよ…。費用はどうするんですか?って」
「それで?」
「答えたのよ。先生の時間外や専門の人に面倒を見てもらうから、もちろん有料制でお願いしますって」
「そりゃ当たり前でしょうよ…。お金が掛かるんだから…」
「ところがね、『お金が要るんだったらそれは趣旨に反するとか、お金の無い人は仲間外れになる』とか云われちゃってね。先生方は『まあやるとしたらテストケースですからボランティアでやりましょう。無料で行きましょう』と言ってくれて、最後には良い雰囲気になったんだけどね」

「また何か言ったんでしょう? そのお金発言の人」
「そうそう、またその人がね、『うちの子は、おけいこ事があるから、早く帰したいんです。そしたら仲間外れになるじゃないですか?』と言いだして…。ワタシ、カチンと来たけど冷静に、『じゃあ、おけいこ事のない子が、幼稚園でおけいこをすると考えればいいんじゃないですか?』とね」
「そしたら?」
「また何か言ってたけど、頭に来てるから覚えていないわ。とにかく仲間外れ一点張りなのよねぇ。いやんなる!」
「やはりね…」

「先生も、クラブ活動は決着つかないと思って、『じゃあ保留にしましょう。』と言ったてくれたのよ。そして、『じゃあ、御自分でお考えのアイデアを出していただけませんか?』とそのお金発言の人に問いかけたの。すると、下を向いて急にだんまりになったの。そして先生が更に輪を掛けるように『お子様方に楽しく社会性を身に着けさせてあげるために、何か出してくれませんか?』と云って迫ったけど、結局その人から何も出なくて、雰囲気は最悪よ。これはまずいと思ったんで、思い付きで「週一の早起き体操」を言ってみたのよ」
「さすが、裕子さん、アイデア出るなぁ」

「そしたらそのお金発言の人が、また言うの。『うちの子は、寝坊だから早くは起こせません。行かなきゃ仲間外れになるんでしょう…?』ってね。あきれて、もう皆やる気をなくしたみたいだった。それでその日の集まりはお開になって、帰ってきたんだけどね…」
「やはりいるのよねぇ、そう言う人って…」

「いるいる、だいぶ前の話だけどね…。自治会の班長会でね…」
と今度は理恵が喋り出した。
理恵は今年、自治会の班長に当たっていて、月一の会合に出席している。
「話は夏まつりのことだったんだけどね…。『初めての開催だから、いろんなアイデア募ります』という主旨だったんよ」
「それで…」
「盆踊りをするとか、模擬店屋台を出すとか、抽選会をするとか、ビアガーデンを作るとか…。いろんなアイデアが出たんよ。黒板に書き出すと、20ぐらいあったかな?」
「楽しい話になると、一杯出るわね」

「そこまでは良かったんだけどね…、いざ出た案について検討しましょうと云う段になって、ある班長さんがね…」
「どうしたの?」
「私は知らなかったんだけど、どうやら社会的にも地位のある人らしいんだ。その人がね…、盆踊りは櫓が倒れることもあるから危ないとか、模擬店は衛生状態が保障できないとか、ビールは未成年が紛れ込んだらマズイでしょうとか…。もうホント、全部のアイデアにいちゃもんをつけてきたんよね」
「さっきの幼稚園と同じだね…」

「自治会の会長がその人に問いかけたんよ。『では、あなたの提案を仰ってください』ってね」
「そりゃ当たり前でしょうよ」
「その答えはなんだと思う?『私はご意見番だから指摘するだけだ。やめろとは言わないが、まあ、気を付けてやってくれたまえ…』だって」

「温厚な自治会長もさすがにあったまきてたんかな、すかさず言ったんよ。『貴方の様に名もある偉い方なら、盆踊りの企画ぐらい簡単なものでしょう? 建設的意見をお願いします』とね。するとその人旗色が悪くなったのか、『用があるから帰ります』と帰ってしまったんよ」

「こういうのいるよね…。他人の仕組んだことにケチをつけるのが上手い人ね…」
「国会でもいたね…。その昔『何でも反対○○党』と云われた政党がいたけど…」
「そうそう、与党の考えたことを批判するばかり、そして欠点の指摘は上手い。私は正義の味方だって振りをしてね。所詮は仲間外れの人たちなんだろうね」

「まあ、そういう人間は相手にしたくないなぁ。余計な時間ばかり食われるしね。裕子さんも理恵さんもお疲れ様」

「ところでね…、あれはどうなったの?」
「あれって何よ?」
「あれあれ…」
と、井戸端会議はまだまだ続くようであった。

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