「ま」と云えば何をさておいても「まる」である。

テレビコマーシャルでおなじみの白鶴「まる」純米酒という紙パック酒を手に入れた。
酒のデータは原料米も米麹も国産で、アルコール度は13~4%、日本酒度は+4、酸度は1.4、濃醇であるが少し辛口の酒となっている。

早速味わってみた。
普通の酒である。
それほど特徴があるわけではなく、素直に飲むことができる。
平均的な酒であろう。
しかし値段は安い。
900mlで600円台である。
恐らくは純米酒では最安値であろうと思われる。
庶民には有り難い酒である。

HT酒造と云えば、現在我が国で最も醸造量と販売量が多い酒蔵である。
トップの酒蔵である。

HT酒造の酒蔵は神戸の灘五郷の一つ御影郷にある。
同じ御影郷には、大手の酒蔵であるKMM酒造がある。
KMM酒造とHT酒造は同じ嘉納一族ということで、名家である。
本家はKMMの方で本嘉納家、HTは白嘉納家と呼ばれている。

余談であるが、この御影郷の東の住吉川を挟んだ魚崎郷のSMM酒造の山邑家との3家で、この近くに有名大学への進学者が沢山出る有名な灘中・高を設立したと云われている。

HT酒造の創業は江戸時代である。
江戸に向けての下り酒を生産し、船で次々と江戸に届けた。
他の灘の酒蔵もそうである。
一世を風靡し、今も一世を風靡している。

この酒蔵や灘・伏見の酒蔵が目指したのは地酒ではない。
全国レベルで呑まれる酒である。
財力もあったであろうが、それはそれである。
幕府の庇護もあったであろうが、それだけでは何ともならない。
たゆみない努力が実を結んで、今があると思われる。

しかしこれら灘の酒蔵は18年前の阪神・淡路大震災で大きな被害を被った。
太平洋戦争の空爆以来の被害であろう。

しかしながら、震災の影はもう殆ど見られない。
現在はそれ以上に復興している様は見事である。

白鶴「まる」は発売以来25年になると云う。
CMは漁師の方々とタレントとのコンビネーションである。
タレントは矢﨑滋が長く務めていて、なじみ深い。
その後、ともさかりえが継承したが、現在は氷川きよしである。
大量に消費される酒を目指して、まだまだその事業活動は続いているのであるが、さて今後はどうなるのであろうか?
興味のあるところである。

HT酒造は住吉南町というところにある。
北へ辿って行けば、阪神の駅、国道2号線を過ぎてJRの住吉駅に至る。
そのJR住吉駅の西に隣接して「本住吉神社」がある。
先日、この白鶴とは関係なしにこの神社を訪れてみた。

この神社、なぜ本住吉神社と云うのか?
ご朱印を書いて頂いた宮司さんが話してくれた。

神功(じんぐう)皇后が三韓征伐からの帰途に船が進まなくなったので、神託により住吉三神を祀ったと記される「大津渟中倉之長峡(おおつのぬなくらのながお)」の地が当地であると云うことである。
この神社が住吉三神鎮祭の根源であり、古くから「本住吉」と呼ばれている。
大阪の住吉大社はこの本住吉から勧請であるとして、この神社が本家であるとのことである。

大阪の住吉まで行けたのであれば、無事帰ったと同じで何ら問題は無い筈である。
難破しそうになったのは途中のこの神戸であると云うのが正しそうである。
なるほどと頷ける話であった。

住吉にあるこの最大手の酒蔵、これからも栄えていくのであろうと思われる。

〔まノ酒 完〕