黄桜と云えばカッパ、カッパと云えば清水崑氏や小島功氏の黄桜カッパであろう。
あの歌とともに、カッパの漫画が浮かんでくるのは、酒好き・酒嫌いに関わらず、老若男女
全てに共通するものと思われる。
それほど強烈な印象のある多少の色香の漂うコマーシャルである。

黄桜がこのコマーシャルを使ったのは、昭和の30年からである。
当時、先代社長の松本氏がCMのキャラクターを探していて、週刊誌の漫画に出会い、それに閃き始まったとのことである。

今も黄桜はカッパ、京都の伏見のKZ㈱の本社には、カッパカントリーと云うレストラン、それに河童資料館がある。
伏見の街のど真ん中にあるので、伏見観光された方なら、一度は目にされたこと、入られたことがあるのではないかと思われる。

伏見の街では、このカッパカントリーを真ん中にして、南には月桂冠の大倉記念館、西には竜馬通りと寺田屋、北東方向に神聖の鳥料理店「TS」が配置されている。

KZ社は新しい会社である。
設立は大正時代の末、この酒シリーズのカバー写真の会社、MT酒造の分家として創業した企業である。

実はこのKZ社は読売グループと関係がある。
特にジャイアンツとの繋がりが深く、後楽園球場時代、東京ドーム時代を通じてスポンサーとなっている。
また、江川事件即ち「空白の一日」の当事者である江川卓と小林繁が共演した「和解の酒」のコマーシャルも知られている。

この2人、今まで球場で出会ってもお互いに会話もしなかった28年間を、黄桜のコマーシャルで和解するというものである。

「俺もしんどかったけどな。二人ともしんどかったな」
「そうですよね」
こんな会話だったような…。

このコマーシャル、広告代理店の幹部と社長の松本氏が酒席で盛り上がり、ダメもとで企画、両者に当ったそうである。
そういうことも平気で出来るこの会社、ユニークな会社である。

さて肝心の酒である。
カッパカントリーには何度かお邪魔しているので、黄桜の銘柄は幾つか味わっている。
どれがどうだと云うことは、残念ながら、もう忘れている。

黄桜には、かっぱデミタスという100mlのカップ酒がある。
100mlのカップは珍しい。
今回はこれを飲んでみよう。

デミタスとはフランス語である。デミは半分、タスはカップである。
レストランなどのコース料理で、食後にコーヒーを味わう場合に小さなカップで出てくることがあるが、それである。
用語はそれの転用であろう?

良く売られている普通の200mlカップの半分で、ちょっと飲みたいなという時には最適である。
コンビニの棚にも結構置いている。
勿論値段も半分近くである。
100円はしない。

度数14、日本酒度はマイナス1、酸度は1.2で辛口でも甘口でもない。少しの薄口か…?
全く抵抗なく飲める。
2~3口で完飲となったのである。

話をカッパに戻す。
我が国にカッパのことが記載された最初は、奈良時代以前の「日本書紀」である。
「河伯(かわのかみ)」と書かれている。
中国からの伝来である。
中国読みはホーボー、中国神話の黄河の神である。

我が国の各地にはカッパ伝説と云うものがある。
例えば九州には、壇ノ浦の戦いに敗れた平家の武士達は九州に逃げ次々と討たれた。
その平家の落人の霊魂は河童となって、九州各地で人や牛馬を川に引きずり込む悪戯したとされている。

福岡久留米市の北野天満宮には「河伯(かはく)の手」と呼ばれる河童の手のミイラがあるそうである。
ある時、菅原道真が筑後川で暗殺されそうになった際、河童の大将が彼を救おうとして手を切り落とされたとも、道真を川へ引きずり込もうとしたのでその河童の手を道真が切り落としたとも云われている。

しかしカッパと云えば岩手の遠野であろう。
遠野には「カッパ淵」という知る人ぞ知る河童の伝承地がある。
ここにはかつて多くのカッパが住んでいて、土地の人々や旅人を驚かしたという伝説が残っている。
カッパを形どった「狛河童」が全国で唯一存在する。
またカッパの神を祀った祠もある。

日本酒とカッパ、どのような縁があるのだろうか?

黄桜は酒でトラになってはいけないとのことで、トラのライバルであるジャイアンツを贔屓するのは分かるが…。

〔きノ酒 完〕