「あ」の付く酒「あさ開(あさびらき)」を手に入れた。
ラベルには「南部杜氏熟練純米酒」と記され、杜氏の藤尾正彦氏の署名・印も施されている。

精米歩合65%、アルコール分15度以上16度未満、日本酒度+2、酸度1.4、原材料は国産米、そして国産米の米麹となっている。
酒蔵は酒銘と同じ「AH」、岩手県の盛岡市の蔵である。

早速頂いてみる。
さすがに東北の酒、濃醇である。
辛さはそうでもなく標準的である。
濃い酒を頂いたと云うのが実感であった。

酒蔵「AH」は明治初期に創業した蔵である。
南部藩士だった創業者村井源三氏が商人として再出発して酒造りを始め、そして時代も明治の初めだったことから、歌の「漕ぎ出る」にかかる枕詞「あさ開」を酒銘としたそうである。

また岩手は、古くから南部杜氏の里として知られた酒処である。
酒処と云うからには、米、水が優れているのは当たり前であるが、そこに技術を磨いた杜氏が加わるのであるから、品質の良い旨い岩手の酒が出来上がるのである。

余談であるが、杜氏の郷として有名な所がある。
日本三大杜氏と云われるのは、この岩手の南部杜氏、兵庫の但馬(たじま)杜氏、新潟の越後杜氏である。

上述のこの蔵の杜氏である藤尾正彦氏は厚労省の現代の名工に選ばれている杜氏である。
岩手県紫波郡に生れ、千葉県を始め全国各地の蔵で腕を磨いた後、今から30年ほど前にこの蔵の杜氏として就任し活躍している。

藤尾氏が就任してから、特選街日本酒コンテスト、パリなどの酒まつり、東北の新酒鑑評会、そして全国新酒鑑評会にチャレンジしている。
その結果、全国新酒鑑評会では22回の連続入賞していて、うち18回は金賞を受賞しているとのことである。

岩手県にはかつて仕事で花巻、盛岡、東和町などに5,6度は訪れたことがある。
残念ながら観光には行っていないので、美味しい食べ物や景色には触れていない。
従って余りの印象はない。
今度は是非観光で行って見たいものである。
特に先ごろ放送された「あまちゃん」の三陸や遠野には行って見たいものである。

さて岩手の酒であるが、酒米はかつては「山田錦」に頼っていたそうであるが、岩手では収穫量が少ないため、新たな酒米の開発が望まれていた。

長野の「美山錦」を岩手で栽培することに成功したが、それはそれである。
その後、この酒蔵を中心に努力した結果、岩手独自の米「吟ぎんが」の開発に成功したとのことである。
これからは「山田錦」を超える米・酒造りが課題になるとの目標を掲げている。

この酒蔵AH、近年の日本酒離れを何とか取り戻そうと、発泡酒や低アルコール酒にもチャレンジしている。
勿論、明治初期の日本の夜明けのように漕ぎ出しつつ、全国区あるいは海外展開にも余念がない。

今後の活躍に期待したいものである。

〔あノ酒 完〕