近所のスーパーの酒売り場で、円錐形の瓶と「一滴入魂」というラベルを見つけた。
「限定」と書かれている。こういう書き方には弱い。
広島の酒はよく目にするが、飲んだことが無かったので、買ってみた。

酒は冷やしても美味いが、常温が一番美味いと思う。
早速、夕食時に飲んでみた。

能書きには、純米吟醸、淡麗辛口、精米度は60%となっている。
麹米に八反錦、掛米は地元の一般米ということである。

飲んでみると、まろやかな中に辛口の少し強い味わいがあった。
喉越しもよく、いくらでも飲めそうな感じである。
300mlの瓶だったので、またたく間に、空いてしまった。

実は、この日から数日後経って、偶然に広島へ行く機会があった。
JR西条駅の近くにあるK酒造を訪ねてみた。
酒蔵展示館がオープンしていて、K酒造の歴史の展示とともに、造っている銘柄のほとんどの試飲ができるコーナーもあった。

展示場の説明員の方と話してみた。
「一滴入魂ですから、一滴一滴入魂するんですね…。一滴を約1マイクロリットルとして、一升瓶1.8リットルでは180万滴もありますね…。180万回の入魂ですね…??」
と問いかけたら、笑っていた。

帰りにK酒造の他の銘柄を少し買ってきた。
それぞれ味は若干違うようであるが、素人の悲しさであまりよくはわからない。
ただ共通して言えることは、まろやかであり、そして辛口であるぐらいか。

西条という酒処は明治の後半になって、地元の商家が酒造を始めたという。
酒蔵が建ち始め、今では8社の煙突と酒蔵がある酒造りの街となっている。

元々西条には京都から延びる西国街道が通っていて、ここは宿場町「四日市」といわれ、本陣もあった。
当然のことながら、そのころから酒は造られていて、本陣などへ提供されていたと思われる。

西条の本格的な酒造りのきっかけは、日清日露の戦争であると云われる。
これら戦争では軍港呉から戦地大陸へ大量の物資が輸送されていた。
その中には酒が必須であり、ここ西条で本格的に作られるようになったのである。

勿論、西条には酒造りに適した水もある。
龍王山の伏流水を井戸から汲み上げて使われている。
カルシウム、マグネシウムの含有量が低い理想的な軟水でだそうである。
ちなみに、各蔵元では、この仕込み水の井戸を一般に開放している。

この酒処西条、現在は灘・西宮、京都伏見と並ぶ日本三大酒処と云われるまでになっていて、全国的に美味しい酒を提供している。

西条と云うところは、広島市の東、東広島市の中核の街である。
呉という港町の、その北東方向にある。

余談であるが、「一滴入魂」とは、「一球入魂」をもじった言葉であろう。
酒に魂を込めるということであり、美味しい酒を提供しようという心意気であろう…。

「一球入魂」という言葉は、野球のあるべき姿、マインドを表したもので、今は普通に使われるが、元々は学生野球の父と云われる明治生まれで、茨城県出身の飛田 忠順(ただより)氏が言い出した言葉である。

更に発展して、某所に「一杯入魂」というラーメンもある。
店主の気合が入ったラーメンであろうか…?

〔いの酒 完〕

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