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 出雲そばを食べさせてくれる店は幾つかあるが、今回は大阪の谷町6丁目駅のすぐ南にある「TBT」と云う店を訪れてみた。
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間口一間半ぐらいの店で、雰囲気は大いにある。

 この「TBT」はもともと出雲の店である。
昭和2年の創業から、「かえし」を受け継ぎ、5種類の節や煮干し、利尻昆布の出汁と合わせてそばつゆを作っているとの掲示が入口にされている。
 カウンターに着席し、基本となる割子そばを注文して、暫く待った。
 かつて出雲大社の門前で食べたそばと同じスタイルのものが出てきた。
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蕎麦麺は3つの器に盛られ、積み重ねられている。
薬味、そばつゆは別の器である。
更に添え物として、飛魚の野焼きが付いているのは嬉しい。

 薬味を乗せ、出汁を掛けて早速頂いてみた。
しっかりした腰のあるそばである。
器が3枚に別れているので、それぞれ薬味やつゆの量を変えて楽しむことができるのは嬉しい。
最初は薄く、最後は濃くして、美味しく頂いたのであった。
 なお、野焼きであるが、柔らかい感触で、これも美味しく頂いたのであった。
 さて、出雲大社には10月即ち神無月に、全国の神々が集まるとされ、この地方では神在月(かみありづき)と称し、神在祭りが挙行されている。
 この地方では、神社に参る際や、その神在際の時に、そば屋の屋台が立ち並びそばを食べると云うのが通例になっていた。
出雲そばと云われる。
 出雲そばは、蕎麦粉を作る時に、蕎麦の実を皮ごと石臼で挽いた所謂全粒分で蕎麦を打つため、色は濃く黒くなっている。
そして出雲地方では割子そばや釜揚げそで食べることが多い。
因みに、出雲そば、信州の戸隠そば、岩手のわんこそばの3つを、日本三大そばとも呼ぶ。
 また出雲松江藩藩主松平不昧公(ふまいこう)は、当時は「高貴な人はそばを食べない」とされていたにも拘らず、お忍びで夜に屋台の蕎麦(いわゆる夜鷹そば)を食べに行くほどの蕎麦好きであったと云われ、出雲そばの発展にも力を入れたと云われる。
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 この「TBT」という店は、大坂の総構の堀の一つである空堀に作られた「空堀商店街」の入口横にある。
この機会であるので、空堀商店街とその付近を散策してみることにした。
 惣構(そうがまえ)の堀と云うのは、城下町全体を囲い込む堀のことである。
大坂城の場合は、城郭の南側は長堀で囲まれていたが、その外側の町人が住む城下町を惣構の堀で囲んでいた。
本当ならば南の惣堀も水を湛える堀としたら良かったのであるが、残念ながら南側は上町台地である。
即ち丘であるので、これに水を導入するのは至難の技である筈である。
従って、戦国時代の山に築かれた城のように、堀切の様な水の無い空堀となってしまったのではないかと推察する次第である。
 この南の惣堀は空堀商店街を中心としてその南北に屈曲する形で築かれていたようである。
どこがどうか中々分からないが、一ヶ所堀の最低部と思われるところを見つけた。
周りの土地よりも低く、東側からは断崖のようになっているところである。
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その場所は田島北ふれあい広場という、ちょっとした近隣の方々の憩いの場所となっている。

 空堀商店街と直交している御祓い筋と云うのがある。
その筋には、「惣」という商店がかたまった場所がある。
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 また空堀の外れ、松屋町の駅に近いところに「練」と云う商店集団がある。
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もう一つ「萌(ほう)」と云うところもある。
ここには直木三十五の記念館が市民の手で設けられている。

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 その他にも色々な建物や商店が見られる空堀地区であるが、堀をそのまま住宅地としたため、場所によっては細い路地(ろーじ)で繋がっている所もあり、大阪の伝統的な文化の町でもある。
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