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 兵庫県のJR山陽本線の明石と姫路の間に加古川という駅がある。
ある日、上手い具合に昼食時間帯に加古川を通ることになった。
前々から一度途中下車してみたいと思っていたが、やっと機会が訪れたのである。
 途中下車してまず訪問するのは観光案内所。
分かりにくかったが、駅舎のギャラリーの中にあった。
「昼飯にしたいんですが…? 名物はなんですか…?」
「それだったら『かつめし』ですね…」
 駅近くにもいくつかの店があるようである。
「お薦めの店は、どこでしょうか…?」
「私たちがよくいくのは、Pという店とEという店です。歩いてすぐですけど…」
『かつめしマップ』が出され、場所の説明を受けた。
「早速、行ってみます。ありがとう…」
 マップを見てみると、確かにたくさんの店がある。
『かつめしモニュメント』というのが地図に載っていた。
まずそこへ行ってみよう。
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 駅前商店街を5分ぐらいか、そこに男の子女の子が並んだモニュメントが建っていた。
身長1m足らずか…。
顔は白ご飯、髪の毛はソースのかかったカツ、横にキャベツのリボンがついている。
このモニュメントでかつめしの全容が分かった。
 店を紹介されたのに申し訳ないが、探すのも手間がかかりそうなので、近くの幟を立てているIという店に入って、かつめしを注文した。
「ソースはどうしますか? 赤、白、緑とあるんですけど…?」
「??XX??」
「それぞれ、デミグラス、ホワイトソース、ほうれん草とバジルです。赤が元祖の味です…」
「じゃあ赤で…」
 ウエスタン風の店である。
全員が、カウボーイハットを被っている。
しばらく待った。
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 待っている間に、店に掲示されている『かつめし六ヵ条』を見た。
『一、加古川かつめしは、お箸で食べるものなり!
二、食べにくければ、お皿を手で持って食しても良し!
三、付け合せには、ボイルキャベツが当たり前!
四、ボイルキャベツは、たれをつけて食べるべし!
五、ソースが入用のときは、店員に伝えるべし!
六、勝負ごとの日には、かつめしを食べるべし! 』
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 出てきた。
西洋皿に白ご飯、その上にビフカツ、上にかなり濃いそうなデミグラス、そして、横にゆでキャベツ…。
 まずカツを食べてみる。
 ソースは見た通りの濃厚さであった。
箸で食べるので、カツ、ごはん、キャベツ、それぞれを摘まんで食べるしかできない。
気楽に、手軽に楽しめるかつめしであった。
 このかつめし、今はやりのB級グルメで考案されたものかと思いきや、そうではなく、戦後間もなく加古川駅前の食堂で考え出されたものだそうである。
加古川市内とその周辺には現在150店もの店があり、スーパーではタレも販売されているということであった。
また、学校給食のメニューにもあるということであった。
 加古川の産業を少し聞いてみた。
 加古川ではくつした製造が地場産業になっているということである。
明治の中ごろ、上海から持ち帰った編立機をきっかけに始まったと云う。
今では奈良県、東京都とともに日本3大産地に発展しているということである。
 加古川という川は兵庫県内で一番大きい川である。
県央には川を挟んで、加西市と加東市、そして河口には加古川市と、古くから人が集まり栄えてきたところであると云われている。
 昼食中心の、つかの間の加古川途中下車であった。