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 今回は奈良のうどんの話である。
 奈良でうどん?と不思議に思われるかも知れないが、店頭に行列ができているうどん屋さんの前を偶然にも通ったので、引き返して並んでみた。
入口の暖簾には「日本三大うどん処 巾着きつね MT庵」とある。
巾着きつね?
写真も貼ってあって、うどん鉢の出汁プールの中に大きな油あげの巾着袋が浮かんでいるスタイルである。
それ以上は分からない。
 時間的に余裕があったので、7、8人の行列の後ろに並んだ。
 暫くすると後ろにも行列は出来た。
この行列の場所、奈良の近鉄電車の終点駅「近鉄奈良」で降りて外に出たところにある東向(ひがしむき)商店街を通り抜け、三条通を少し左に行って次の餅飯殿(もちいどの)商店街へ入った直ぐの右手である。
 行列の直前にいる2人連れの若者、ずっと大声でしゃべりっ放しである。
ただ前を向いて喋っているので、こちらへの被害は少ない。
その前の人は煩かっただろうな?と勝手に思ってしまう。
 後ろは修学旅行の女子高生のグループである。
 大人の男が付き添っている。
言葉から考えると、女子高生は関東から来ている風、しかしキャッキャッとは喋らない。
割と躾の良い学校の生徒だろうと思われる。
男はベタベタの関西弁、当地のガイドさんか何かであろう。
何を食べるかの話で盛り上がっている。
 そうこうしているうちに店内から、同じ制服の女子高生集団が出てきた。
付き添いはない。
行列女子高生と仲良しのようである。
「カレーうどん、食べて来た」
と云った女の子がいた。
「私も」「ワタシも」と、一瞬賑やかであった。
これで、注文は決まりであろう。
それにしてもカレーうどんが人気とは?
世の中、わからないものである。
 待っている間に隣のNT堂という餅ベースの和菓子を売る店で、高速餅つきが始まった。
すかさずガイド氏、女子高生達に
「順番確保しといてあげるから、見に行っておいで」
と優しく促したのであった。
 30分ぐらい並んだであろうか、やっと店の中に案内された。
10席位のカウンターと4人掛けのテーブル席が5つぐらいの店である。
 カウンターに先程の行列の男2人組が座っている。
できるだけ離れて座ったのであった。
 これが大正解であった。
この二人は食べる間も大きな声で喋りっ放しであった。
漏れ聞くと、自衛隊に就職するとかどうとかと言っている。
駐屯地には町から遠いところもあるので、カラオケに行くには時間がかかるとか、伊丹だったらいいけど、地方だったら嫌だとか…、転勤があるのかないのかとか…。
「こんな奴らに自衛隊が務まるかい! 世の中舐めたらいかん!」と怒鳴りたかった。
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 店内に置いてあるメニューに説明が書かれている。
日本三大うどんとは、秋田の「稲庭うどん」、群馬県の「水沢うどん」、長崎県の「船頭(ふなさき)うどん」で、同時に食へ比べられると云うことである。
稲庭うどんは分かる気がするが、その他はどうだろうか?「日本三ヶ所うどん食べ比べ」とでもすべきであろう…。
 小生の注文は勿論「巾着きつね」、暫く待つこととなった。
うどんが来る前にカウンターの隣に、先ほどのガイド氏が座った。
ガイド氏の注文はカレーうどん。
女子高生と喋りながら決めていたようである。
話のタネに同じものを味わっておこうかと云う寸法であろう。
 「先生ですか?」
と聞いて見た。
「いやいや、タクシーの運転手ですよ。京都のタクシーです」
「何でまた京都から?」
「修学旅行ですと纏まった台数が要るんです。マンモス校だと200台とかね。奈良にはそんな台数が受けられる会社は無いんです。だから旅行会社は京都の会社に発注するんです。それに奈良には泊まるところも少ないから、京都に泊まるケースも多いんですよ」
「なるほどね…」
ガイド氏もこの店は初めて、高校生に云われて連れてこられたという。
そんな話を聞きながら巾着うどんを待った。
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 出てきた出てきた。
店頭の写真の通り、褐色のうどん出汁の中に油揚げの巾着袋が浮いている。
袋は緑の紐で結わえられている。青ネギのようである。
 まず出汁、色の割には味が薄い。
好み的にはもっと濃くしてほしい。
 次に巾着を破ってうどんを出す。
細めの手打ちうどんである。
麺の茹で加減は普通。取り立てて云うほどの特徴は無い。 次に油揚げ。
普通のきつねうどんは、油揚げの甘辛い味付けで、うどん鉢の中の絶妙なバランスを取っている。
この油揚げに殆ど味は付いていないので、どちらかと云うとキザミうどんである。

 ガイド氏に、
「カレーうどんが正解ですね…」
と、女子高生たちの選択を褒め称えたのであった。
 味は個人の好みであり、調理人の好みと合わないだけのことである。
しかし、この姿と仕掛け、この巾着うどんには何物にも代えがたいインパクトがあることに拍手である。

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