近所のスーパーで「通の辛口・金紋朝日」と云うのを見つけた。
「つ」の番の酒にはちょうど良いので、早速買ってみた。
上撰というランクであり、4合瓶でワンコインで財布にも優しい。

早速呑んでみた。
確かに口に含んだ時にはもう辛い。
喉越しはもっと辛い。
さすがに通の辛口であると思われる。

このような酒になると、量はあまり進まない。
休憩しながら、甘口の肴でも摘まみながらでないといけない。

この通の辛口はKY本家酒造の醸造である。
本社は埼玉県さいたま市指扇という所である。

指扇という街は、かつて電車で通った記憶がある。
大宮と川越を結ぶJR川越線の駅だったような気がする。
名前は綺麗だが読み方が難しい。
難読の一つであろう。
調べてみるとかつての村であって、その地形が扇で江戸を指しているような形から指扇と名付けたとのことであった。

KY本家酒造の創業は江戸中期である。
創業者の小山屋又兵衛は播磨国の生まれで、灘・伊丹・伏見で酒造りの修業をして、武蔵国、現在の埼玉県にて酒造業を始めた。
そしてその後、上述の指扇で良質な湧き水が出ることを発見し、そこに酒蔵を建設し、現在まで休むことなく200年間も続いている。

この酒造会社、グループ経営をしていて、全国に6つの酒蔵を手中に収めてはいるが、その地域の特性を生かすべく分社経営を行っている。
グループ名は世界鷹グループと云う。
そしてグループ全体での出荷量は全国で6位、東日本では最大の出荷量となっている。

関西地区では、伏見の京姫酒造(前世界鷹酒造)、東灘魚崎の浜福鶴銘醸がグループである。
浜福鶴は阪神淡路大震災で仕込み蔵が全壊したがその後再建し、常時酒蔵見学も受け入れている。

辛口の酒に出会ったので、日本酒の辛口・甘口とは何か?

日本酒のラベルには例えば「日本酒度+3」とかの表現がなされている。
この日本酒度が甘口辛口の目安である。
この数字は含まれている糖分から求めて辛口度を表したものである。

糖分の少い方が辛口になるので、数値は自然界とは逆となり、辛口はプラス、甘口はマイナスで表現されることになっている。

例えば、今までにこの酒三昧シリーズで呑んだ酒の中では、春鹿の超辛口が+12という数字であったのが、最も辛い酒であろうか…。

この通の辛口の日本酒度は表示されていないので、どれくらいか分からないが、恐らくは+10はあるのかと思われる。

現在は辛口の酒が持て囃される時代である。
それは戦後の三倍醸造酒(三増酒)への反動であると云う説がある。

三増酒は醸造した酒にアルコールを加え、さらに水飴などの糖類を加えた甘ったるい味が多かった。
そのことから「甘い酒=悪い酒」といった一方的なイメージが定着し、その反動として、豊になった現在、辛口の酒が求められるようになったと云う説である。

それもあるだろうが、辛い料理には甘い酒、甘い料理には辛い酒が合うのも事実である。
現在は料理の味付けが、旨みがどうだ?とか出汁がどうだ? とかが良く言われる。
そして美味しい料理が多くなった。
つまり料理・肴が旨く、どちらかと云うと甘くなったのである。

そうなると当然のことながら辛口の酒が好まれることになる。

辛い料理もある。
醤油だけで煮付けたような料理である。
そのような料理には、甘口の酒が合うことになる。

どちらにしても、甘い辛いは個人の好みが大きく左右するものである。
現在はどちらの酒も用意されているので、場面場面で呑み分けて楽しみたいものである。

〔つノ酒 完〕